フランスの先生から、せん定を学びました!(番外編2 Courson,Baguette)
フランスのロワール地方の機関であるSICAVACから、Emeline PITON先生をお招きし、せん定講習会を開催しました。
「番外編」として何回か、主催者側として得たちょっとした裏話や、管理人が持った印象などを紹介していきます。
(今回の和訳にあたっては、配布資料で紹介いたしました通訳を引き受けていただいた皆様のアドバイスを統合していることを申し添えます。)
(番外編2) Courson, Baguette : 「サッカー、ケーン、シュート」
事前にPITON先生からいただいた資料の和訳にあたって、まず通訳を引き受けていただいた皆さんと、専門用語をどんな日本語に当てはめるかを検討しました。どこかに先行文献があるのではと思うのですが、今回は十分に下調べをする時間がなく、いくつかは仮に訳語を当てはめました。
さて、一番皆さんと検討した言葉は、意外かもしれませんが実は Courson(クルソン), Baguette(バゲット) の2つです。通常日本では前者をギュヨの「予備枝」、後者をギュヨの「結果母枝」と称することが多いと思います。しかし、次のような疑問が投げ掛けられました。
・Coursonは、ギュヨ仕立てでは樹液流動を確保するためにはむしろより大切な枝であり、「予め樹のことを考え備えておくべき枝」が真意。だけど予備という言葉を勘違いして、適当に作っておけば良い枝とか、作っても作らなくても良い枝、などと解釈されている例があった。また、フランス語ではギュヨでもコルドンでも短く切って残す枝をCoursonと呼ぶが、日本語だとギュヨは予備枝でコルドンは短梢など違う言葉が使われているのは混乱しないか。
・Baguetteは、翌年のぶどうを生産する新梢を多く生み出す枝で、文字通り「結果母枝」である。だがコルドンでは短く切った枝から新梢が生み出されるので、コルドンで残す枝も立派な「短い結果母枝」である。
こうした検討を経て、今回はCoursonを「短梢」、 Baguetteを「長梢」と訳すことにしました。
しかしその後も、「フランスの方が栽培歴が長いのだから、無理に日本語に訳さなくてもいいのでは」、「クルソン、バゲットとそのまま使った方がいいのかも」と議論を重ねました。
個人的な見解ですみませんが、テロワール、ミクロクリマなどはもう、日本語に訳さずとも通用する言葉になりつつあります。それと同じで、クルソンとバゲットもそのまま使った方がよいのかもしれません。
さて、タイトルの「サッカー、ケーン、シュート」ですが、サッカー通なら某国の代表選手がどうしたのと思うかもしれません。実はこれら、れっきとしたせん定時の専門用語です。長野県ではブルーベリーのせん定指導を普及センター、専門技術員が行う際、最初に「この3つの横文字だけ覚えてください」と説明してからせん定に入ることが多いです。それらを強引に日本語に訳すと、サッカーは「ひこばえ」、ケーンは「主軸枝」、シュートは「主軸枝から発生した1年枝」となるでしょうか。なんだか日本語にしてもわかりづらいですね。
日本のブルーベリーは主にアメリカで確立された栽培技術を持ち込みました。このためせん定の用語も日本語に無理に訳さずそのまま英語を使ってきた側面があります。なお、英語圏でワイン用ぶどうの栽培技術を学んできた皆さんは、クルソンのことはスパーと教わり、バゲットのことはケーンと教わったのではと思います。言葉はそれぞれの国や地域文化の象徴ですので、尊重して使っていくのもよいかなと思います。